満田 晴穂セミナー/自在置物の世界 江戸時代の技のその先を行く金工作家

2013年6月29日、本校キャリアスクールの学生と一部専門課程の学生を対象に金工作家 満田 晴穂(みつた はるお)氏によるセミナーが行われました。

満田氏は東京藝術大学卒業後、日本の伝統工芸である自在置物を発表している若手の金属工芸作家です。

 

自在置物とは…

江戸時代末期から明治時代に渡る金属工芸品。鉄や銅、銀、赤銅(金と銅の合金)、四分一(銀と銅の合金)を主な素材として動物や昆虫を写実的に動くように作られた置物。自在置物を作れる人はほぼ残っておらず、制作技術は限りなく滅びているのが現状。

 

セミナーでは作品の制作工程など作りの話や、これから作家として・ブランドを立ち上げて生きていく上でのメッセージもいただきました。

 

セミナーの一部を抜粋して掲載いたします。

 

 

司会:自在置物を作り始めたきっかけは何ですか?

 

満田:大学で金工を学んだのですが、大学の授業で伝統工芸品を見る機会がけっこうあり、自在置物を見て… 一目惚れに近かったですね。

 

…アトリエの紹介などの後、作品の画像を見ながら…

 

司会:こちらの作品は?

 

満田:こちらはヒメマイマイカブリです。カタツムリを食べる昆虫なんですけど、昆虫好きの方にはすごく人気があるんですよ。

 

 

 

司会:こちらが製図ですね?

 

満田:はい。作る前はモチーフをよく観察してから図面に起こしていくんですけど、その際ノギスでミリ単位で測ります。モチーフを分解してどの関節がどのように動くかも研究します。

 

 

 

司会:では、どんな風に作られているのか種明かしというか、説明をお願いします。

 

満田:この昆虫は足の先がふにゃふにゃとよく動くように出来ているので、1つ1つの金属のパイプ材のパーツの中にステンレスのワイヤーを通してかしめています。本物もこのような構造になっています。触角の部分も同じように作っていくんですけど、触角の場合は太さ0.8mmのパイプを1mm角くらいにカットしてそれを通してかしめています。この仕事がけっこう飽きますね。(笑)もっと足が多い昆虫だと、本当に心が折れそうになりますよ。

 

 

満田:そしてこんな感じで各パーツを作って仮組みしていきます。僕の場合モチーフは2つ用意します。1つは分解してパーツを研究する用、もう1つはそのままの立ち姿勢などを見比べます。仮組みが終わるとしばらく眺めてにやにやしてます。(笑)その時が一番の至福の時ですね。この後煮色という色上げ方法で仕上げます。

 

 

 

司会:自在置物を作る上で一番気を使うことなどはありますか?

 

満田:自在置物を作る中でよくぶつかるところなんですけど、自在置物はただ動けば良いというものでもなくて、置物ですので置いた時に一番美しく見えるようにならないといけないんです。なので、組んだ後のチェックや構造などには相当時間をかけます。

 

司会:ジュエリーも着け心地や着けた時の動きをチェックするのと同じように、自在置物も動かした時と置いた時の両方のチェックが必要というわけですね。

 

満田:そうですね。ジュエリーも置物も絶対そうだと思うんですけど、作品に対して客観視が出来るかが大事ですよね。僕は全体を組んた時にじっくり作品を見つめて、ごまかしがないか客観視します。僕の場合は本物が目の前にあってそれを描写しているわけですから、自分がごまかしたところがわかっていると完成したあともその思いがついて回るんですよ。

だからずっとそれを引きずるようならそこを1つ1つ潰していったほうが、結果的にクオリティーも上がるし自分の精神的にも…。

特に販売する場合は人にお金を出して頂いているわけですから、その重圧はすごいものになるので。そう思うと絶対に手は抜けないですね。

 

司会:今の言葉はほとんどの方の胸に響いだのではないでしょうか。ありがたいお言葉ですね。

 

 

作品のモチーフはモチーフ冷凍庫に保存されています。その中はタッパーに入った沢山の虫たちが。

 

 

中にはダイオウグソクムシまで!

 

一同:「きゃーーーーーーーー!!」

 

…そして作品を見ながら話は満田さんの活動の話に…

 

 

 

満田:僕が所属しているところは現代アートのギャラリーです。僕自身は伝統工芸の人間なので、作品(虫)を単体で見せる場合(上写真)とこのようにコンセプトをつけたかたちで見せる場合(下写真)の両方で発表しています。

 

 

 

作品名/晩餐

 

司会:満田さんは自在置物のみで生計を立てられているそうですが、大変な時期もありましたか?

 

満田:当然ありますね。大学を出て作家一本で生きていこうと決めたので、就職活動もしませんでした。アルバイトはしていましたが、作家になるとバイトをどれだけ減らすかということが重要だと自分では思っていますのでなるべく入れないようにしていましたね。

失敗してしまう人ってアルバイトを増やしてしまうんですよね。自分が生活する為に稼ぐ時間が制作活動の時間より増えていってしまうとそのうちそっち(バイト)がメインになるいう方をけっこう見るので。なので、バイトをどんどん削って制作の時間を増やすということをしてきました。1年近くただただ作って発表する場はわからずに販売も当然出来なくて。

 

司会:それからどのようにして今のように?

 

満田:とりあえず色々な所へ作品を持って行き、色々な人に見せてみました。その中で自分の作品を面白がってくれる人がいて、その人が今の所属しているギャラリーを紹介して下さいました。そしてギャラリーのオーナーがアトリエに来てくださることになり、作品の取り扱いが決まったというわけです。

 

司会:作家として生きていく上で大切に思っていることなどありますか?

 

満田:色んなジャンルの人、ジュエリー以外の人にもたくさん知り合いを作っておくことが今後絶対に役に立ってくると思います。当然作品のクオリティーは前提条件としてありつつも、あとは運もありますけど、結局その運を自分がどう引き寄せるかなので人とのつながりが本当に重要ですよね。むしろ、それ(人とのつながり)しかないと思っています。

そしてホームページは絶対に持っておいた方がいいです。作家として生きていく、自分のブランドを立ち上げていく目標があるなら絶対ですよね。

自分もホームページは早めに作っておいたんですけど、もしホームページがなかったら紹介されていなかったかなという気もしています。自分の作品を調べてもらう術がないということになりますからね。

すごいと思った言葉を紹介すると、「作家がホームページを持っていないのは会社に電話が無いようなものだ」。要は興味を持ってくれた人がアクセス出来ないということは一分一秒損しているじゃないですか。いや〜ホームページは作った方がいいですね。 持っていない人は今すぐ作りましょう!

 

 

その他にも数多くの制作秘話などをお聞きし、セミナー中も学生から沢山の反応や質問が出るなど大変充実した時間となりました。

 

満田さんの作品をご覧になりたい方は、是非下記の個展に足を運んでみて下さい。

 

満田晴穂個展「JIZAI」


■会期:2013年7月6日(土)~9月1日(日)


※金土日曜日のみ開廊 平日は電話にて要予約


■営業時間:11:00-19:00

■会場:ラディウムーレントゲンヴェルケ


■住所:東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17

■tel/fax:03-3662-2666


■URL:http://www.roentgenwerke.com/

■満田晴穂氏web site :http://m-haruo.com/

地図・写真:レントゲンヴェルケホームページより