2018年度イタリア・ベルギー・オランダ研修旅行報告/後編(エイントホーヘン〜アムステルダム)

2018年度イタリア・ベルギー・オランダ研修旅行報告/後編を始めます。

今回の目玉の一つであるオランダエイントホーヘンでのDutch Design Weekについて紹介します。エイントホーヘンは世界的電気機器メーカー「フィリップス」の本社がある工業都市。この街で毎年開催されるデザインの祭典がDutch Design Weekです。

エイントホーヘンというまち全体が1週間に渡ってデザインとアート作品を堪能できる世界でも珍しいイベントで、入場チケットである腕輪をしていれば会期中いつでもフリーサイクルをレンタルできたり、フリーのタクシーやバスが利用できます。街はいくつかの大きなエリアに分けられ、それぞれの場所で様々な展示やイベントが行われています。

今回は、会場入りする前に、出展者でもあるTU(University of Technology)で最先端の素材開発や構造開発について専任の教授トロイ氏よりレクチャーを受けました。トロイ氏はヨーロッパ全土で選ばれた15人に入るほどの優れた研究者で開発に対する情熱は聴くものを虜にするほどのパワーでした。学生たちも圧倒されて、ものづくりへの熱い姿勢を学べたようです。

University of Technology(国立工科大学)の校舎。

テクノロジー学部のトロイ教授により、最先端の技術が作り出した素材や靴のサンプルについてレクチャーいただきました。

シューズの学生のみならず、ジュエリーコースの学生も最先端の素材に興味津々。

シューズの学生は最先端の素材を手にハイテンション。

新作サンプル。

これを実際に数ヶ月履いて、その耐久性を検証しているそうです。

3Dプリンターを駆使した、面白いフォルムと素材感のブーツ。

トロイさんの「伝えたい!」という圧倒的なパワーと情熱に学生たちも感激。皆、口々にすごかった!を連発していました。

校舎の入り口前で、記念撮影。

その後、歩いてDutch Design Weekに向かいました。会場では、TUの学生作品ブースで最新のテクノロジーの研究発表ブースをまわり、その後は各々行きたいエリアにフリータクシーやフリーバスを使って移動して行きました。

私はイベントの中心的団体エイントホーヘンデザインアカデミーの卒業制作展示を見学しました。ミートマーケットと呼ばれる大きなウェアハウスに様々に工夫を凝らした作品が並びました。全体の印象としては、そのビジュアルプレゼンテーションのクオリティーの高さに目を奪われました。作品の図録を購入してきましたので興味のある人は職員室に見に来てください。

エントランスで入場チケットを購入し、アン先生の説明の元、会場に向かいました。

街中にはdesign week のフラッグが連なっています。

このエリアはもともと工場地帯で、その工場の建物をリノベーションして展示を行っていました。

TUの発表ブースが並ぶ建物。

会場内部

学生たちは、自分の研究を丁寧に来場者に説明していました。

デジタル機器を多用したクオリティーの高い展示が多く見られました。

バクテリアの生活環境を変えることで布を様々に染め上げるという研究の展示。

工場ビル会場前のパノラマ。

TUの展示がされていた向かいのビルではLike Leatherというテーマで様々な加工された素材が展示されていました。

木材のような表面処理をした革。

植物の繊維を織り込んだ革のような素材。

表面処理も様々。

魚のなめし革。

壁面と同じテクスチャーの革で作ったショルダーバッグ。

他にも、段ボールを使った子供向けのワークショップや様々なプロダクト製品の販売も行われていました。

無料タクシーには協賛企業や出展者が設置したルーフデコレーションが目を楽しませていました。

 

そのタクシーでデザインアカデミーの卒業制作展が開催されている会場へ。

今年で18回目を迎える卒業制作展会場。

受付&クローク。全て学生たちが運営しています。

プロダクト会場では暗い会場内では、ライトの浮かび上がる興味深い作品が広い空間を埋め尽くしていました。

 

プロダクト会場の隣のファッション会場にも、新しい素材の見本や新しい試みの実験的な作品がたくさん展示されていました。

左右の金具がマグネットになっていて開閉がとてもスムーズなオープンファスナー。

さて、これらは何のパーツでしょう?

新素材ブラジャーでした。

TUの教室で見たシューズのサンプルも展示されていました。

ダッチデザインウィークでは、他にも映像や音楽のイベントなども多数行われており、全てを観ようと思うとやはり1週間は必要なのを実感しました。

 

次の日の朝散歩でみつけた路上展示。いくつかの通りを繋ぐように頭上にプラスチック素材で作られたオブジェが吊られていました。

中には加硫スニーカー(バルカナイズスニーカー)を吊った通りもありました。

この日の朝食後、同行のDiane Becker(ダイアンベッカー)先生のお声がけでシューズプロモーターのNicoline(ニコリン)さんがホテルを訪れ、シューズの学生対象にシューズを取り巻く現状や学生の疑問に対しての質問会を開いてくれました。

現在の靴業界の問題点について自分の考えを話す学生。

テクノロジーとデザインの関係についての質問をする学生。

短い時間ではありましたが内容の濃い時間が流れました。

その後、最終訪問地のアムステルダムに移動しました。

初日は、オランダらしい風景のあるザーンセスカンスへ行き、風車を見学したり、水路が張り巡らされ、1200以上のは橋のあるアムステルダム(世界遺産)の街を散策したり、ショッピングしたりと観光を楽しみました。

ザーンセスカンス。オランダらしい風景。

ミッフィーもオランダ生まれ。でもオランダではナインチェと呼ばれていてミッフィーでは誰もわからないそうです。

アムステルダム市街地を移動するのはトラムが便利。チケットは1回3€(90分有効)。

トラムで街の中心へ移動。とても綺麗な車内で連結部にはチケットを売るカウンターがあり車掌さんを常駐しています。

水とともに暮らす。癒される環境。

Dancing Buldings(踊るビルたち)。その名の通り、ビルそれぞれが前傾しているために踊っているように見えます。オランダの建物は細長く入口も狭いため引っ越しの際は屋根に取り付けられた滑車を使って荷物を窓から入れるそうです。吊る下げた家具などが外壁にぶつからない様に前面を傾けているそうです。

ところどころで見かけた路上チェス。路上彫刻とゲームの要素を兼ね備えた面白いアイデアです。日本の街中にもこんな将棋があったら、見知らぬ人同士のコミュニケーションが図れて良さそうですね。

 

二日目は専攻に別れてそれぞれに興味のある作家さんやキュレーターのアトリエを訪問しました。ジュエリーの学生はコンテンポラリー・ジュエリー作家のBeppe Kessler/ベッパ・ケスラー(http://www.beppekessler.nl/)さんのアトリエを訪問しました。BEPPEさんはオランダ在住のジュエリーアーティストで、2年前にも東京校でワークショップをしてくださったことがあります。アムステルダムのセントラルから2駅トラムで移動したところにある彼女のアトリエの前に着くとこんなウェルカムボードが。

小学校だった場所を改装したアトリエは天井も高く広々とした空間でした。

壁には彼女が描いたドローイングが飾ってあり、そのドローイングから生み出されるジュエリーもあれば、ジュエリーからインスピレーションを受けてドローイングを描く場合もあるとのこと。
ドローイングのような雰囲気のある彼女の作品が生まれる理由が分かった様な気がしました。

今までの作品のファイルや制作途中のものを見せてもらいながら、ゆっくりと彼女の制作の仕方などを解説してくれました。

大きいアトリエの奥には細かい作業をするスペースが。

彼女はロウ付けなどの彫金技法が苦手で、その代わりの技法を自分で見つけ出し、全くオリジナルな雰囲気のあるジュリーを作りだしています。

今まで作られた作品全てはこのノートの中でしっかりと記入され、どのように作られたか、誰が所有しているかなどをわかるように管理しているそうです。

1時間半ほどの時間の中で学生たちは各々刺激を受け、充実した時間を過すことが出来ました。

午後はシューズの学生とジュエリーの希望者は特急で1時間半のデン・ハーグというオランダ第三の都市へ行き、世界各国の優秀な靴を世界に紹介しているキュレーター兼プロモーターであるLiza Snook/リザ・スヌークさん(https://www.virtualshoemuseum.com/ana-cvejic/liza-snook)のアトリエを訪れ、彼女のこれまでの仕事の経緯をレクチャーいただいたり、アトリエをシェアしているバッグデザイナーのRose(ローズ)さんにデザインのアイデアやその具現化への考え方などをレクチャーいただきました。アトリエは海に近く、帰り道にオランダの浜辺を散歩して心地よい海風を楽しみました。

アトリエではハーブティーとクッキーが振る舞われました。

ダイアン先生とローズさんの会話も弾んでいました。

ローズさんによるオリジナルバッグへのこだわりについてのお話。

アトリエでみんな揃って一枚。

風が強く寒かったですが爽快感を満喫しました。

最終日には全員でナイメーヘンにあるコンテンポラリージュエリーのGallery Marzee/マゼー(https://www.galeriemarzee.com)を訪問しました。Gallery Mazeeは本学との繋がりは20年以上で過去多くの卒業生や講師の作品を展示してくれているヨーロッパ屈指のコンテンポラリージュエリーの専門ギャラリーです。ギャラリーというとついこじんまりしたイメージですが、実際は地上3階、地下1階でとても広い図書館のような建物に美術館に所蔵されるような過去の貴重なジュエリーから世界各国の最新のコンテンポラリー・ジュエリーが綺麗に陳列されています。

1,2階では各国のジュエリー学校の優秀卒業制作が展示販売されていて、もちろん本学卒業生のものも展示されていました。無数の引き出しに収められた魅力的なジュエリーに学生たちはそれぞれに思いを馳せ、熱心にスケッチをしたりメモを取ったりと大変有意義な時間を過ごしました。コンセプトの面白さ、デザイン性、立体感、素材の扱いなど、専攻に関係なくとても勉強になったようです。

展示台はストッカーになっており、世界各国のコンテンポラリージュエリーを間近で見られます。

ガラスケースには、これまでのコンテンポラリージュエリー作品の中で特に貴重なミュージアムピースが展示されていました。

思い思いに好きな作品の作家名をメモしたり、スケッチをしたりして過ごしました。

1階エントランス横の展示スペース。

3階の書籍コーナーには貴重な書物があり、自由に楽しめます。

 

その夜はアムステルダムに戻ってフェアウエルパーティーを行いました。

皆、楽しそうにその日にあったことやこの旅行をふり返っていました。

最後の夜ということで、数名の学生はダイアン先生に物作りやデザイン、自己表現などについてのお悩み相談をしてもらっていました。

この相談会はダイアン氏の計らいで次の日の出発ギリギリまでホテルのロビーで行われました。ダイアン先生に今抱えている問題を泣きながら話す学生もいましたが、話終わって皆晴れ晴れとしたいい顔をしていました。

今回の研修旅行は、誰一人として体調を崩すことなく、事故にも合わずに行程を全うでき、大変実りの多いものとなりました。

ここでの経験はこれからの学業、自己表現、そして人生に必ず役に立つものと確信しています。今回の研修を機に英語を学び始めたり、海外に視点を向けたりする学生が増えてくれることを強く願っています。

以上、2018年度海外研修旅行報告を終わります。

 

nagao/murase(nagao)